うきは通信

うきはの窯元を巡ろうvol.2 渋みある風合いの焼き締めが特徴 一の瀬焼・窯元陶秀苑に行ってみた!
2022/10/05
インタビュイー:一の瀬焼・窯元陶秀苑 窯元 渡辺 陶文さん
インタビュアー:移住女子ちえ |
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うきは市浮羽町にある一の瀬焼・窯元陶秀苑 | ||
手に馴染む土の暖かさと渋みが魅力 |
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__陶秀苑の陶器の魅力を教えてください。 うち(陶秀苑)は焼き締めが特徴的です。焼き締めは釉薬をかけずに薪窯で焼くため、灰が付着して味わいと渋みのある色味が出ます。灰をかぶっている前側は斑点のような模様や白っぽい色になりますが、後側は灰がかからないためすっきりとした見た目になります。焼き締めではこのように陶器に前と後ろができるところが特徴です |
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左が前、右が後ろ | ||
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さまざま風合いの作品が並ぶ店内 | ||
また陶秀苑では土感を味わっていただきたいという思いから「高台(こうだい)」に釉薬を塗る過程を省いています。土感の手に馴染む暖かさを感じてもらえるとうれしいです。 |
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陶器下部にある土の色している部分が「高台」 | ||
陶秀苑 窯元 渡辺さんに聞いた陶芸の基本の「き」! |
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1.粘土 現在は分業化が進み粘土は作るよりも買う場合が多いです。価格や質は火に耐えられる耐火度や取れる量の希少価値で異なります。 |
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2.色 色が出るまでの工程としては、乾燥と素焼き(800度)の後に色のある釉薬を塗布します。その後に窯焼きを行うことで釉薬が溶け出し(1200度)、色や模様が発生します。特に陶器によく見られる横筋の模様は、「指目(ゆびめ)」というものに釉薬が溜まるため発生します。 |
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「指目」に釉薬が溜まってできた模様(手前の陶器の白い部分) | ||
3.焼き 温度は温度計で管理するのではなく、長年の勘や火の色で判断しています。ゼーゲルというものを使用して、外から温度が確認できるようにしています。だいたい1270度〜1290度でゼーゲルが傾いてくるので、窯内に左右に置いたゼーゲルの傾き加減が偏らないように窯の温度を調整します。 また、釉薬の種類によっても溶けるタイミングが異なります。温度が高すぎると釉薬が流れ過ぎてしまうので、適正な温度を見極める必要があります。 特にセット販売での注文の場合は、模様が同じように流れている必要があるため、同じ型のものを複数個作ります。その中から一体感があるものを選んでセット販売しています。 |
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左のゼーゲルが温度が低い状態、右のゼーゲルが温度が高い状態 | ||
4.つや つやの出方は窯の火からの距離によって異なります。火が強く当たっているものはつやが出やすく、表面がざらついているようなものは火から遠い位置にあったものです。 |
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5.焼き締め 陶秀苑では鉄分の少ない土を使用した、渋みのある仕上がりにしています。焼き締めとは釉薬をかけず、素焼き後にもう一度焼く方法です。観賞用や美術品にも多く見られる手法です。焼き締めには温かみや土の温度があり、手に馴染みやすいことが特徴です。 |
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焼き締めで作られた陶器 | ||
職人の見極める力が薪窯独自の味わいを生み出す |
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__薪窯であることの利点とは?また大変なところはありますか? 利点としては、焼きの工程で灰が付着するため独特の味わいある作品ができるところです。大変なのは、炊く時間が30時間前後の時間を要するため、その間はずっと管理しておく必要があるところです。また窯を炊くために薪の用意が必要なので、そちらも準備します。今は解体された建物の松の廃材を譲り受けて薪として使用しています。現在は薪を作るために薪割り機を使用していますが、1日分の燃料を3日間かけて人の手で薪割りをしていた時代もありました。薪の使用量としては、1000度まで上げる時の量と1000度から1300度まで上げる時の量が同じくらいです。急激に温度を上げると、陶器に塗った釉薬が沸騰し始め、気泡ができてしまうため、段階的に温度をあげていく必要があります。また窯に入れる空気の量でも色味は異なるので、同じ釉薬を使用しても同じ色味・模様になるとは限りません。仕上がりは薪の材質や四季、天気に影響されるので、それらを加味して管理するようにしています。 |
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陶秀苑の薪窯 | ||
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焼くときに使用する薪 | ||
陶秀苑 窯元 渡辺さんが語るこれからの新しい流れ |
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__これからの陶秀苑はどうなっていきますか? これからといっても、弟子を取るつもりはないので、自分の代で陶秀苑は閉窯するつもりです。今は自分ができる範囲での制作をして、作りたいものを作っています。 |
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渡辺さんの作業場風景 | ||
今は量産できる仕組みができて、同じ陶器をいくらでも作れる仕組みになってきています。ですが、だからこそこれからは高くても良いものを欲しいという本物嗜好になっていくのではないかと考えています。若い人たちがこれからの流れを作っていくのを楽しみにしています。 | ||
〈お店情報〉 一の瀬焼・窯元陶秀苑 HP:http://tousyuuen.com 住所:福岡県うきは市浮羽町朝田1101-4 TEL/FAX:0943-77-5803 |