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観光×スポーツでつながるまち「うきは市」
子どもたちの夢を応援し、関わり続けられる“第二のふるさと”へ
福岡県南部、耳納連山を背景に豊かな自然と果実の恵みを抱くまち、うきは市。
「フルーツ王国」として知られるこの地には、年間を通じて多くの観光客が訪れるが、いま注目を集めているのが“スポーツと観光が交差する“まちづくり”。
特に、ラグビーを軸に育まれた地域の絆や、子どもたち・保護者・地域が一体となる関係性は、「訪れる」「体験する」だけにとどまらず「関わり続ける」、つまり“関係人口”創出のヒントとなっている。
うきは市・浮羽究真館高校ラグビー部が教えてくれる、“まちと生きる”ということ
うきは市唯一の県立高校、「浮羽究真館高校」のラグビー部に、ひときわ熱い青春がある。
グラウンドに響く声、泥だらけの笑顔、寄り添う地域の人々。
今回編集部は、この小さな町で、スポーツと地域が一体となって生まれる物語を取材してきた。

強く、優しく。吉瀬晋太郎監督という存在
教師であり、監督であり、そしてどこまでもラガーマン。
坊主頭に鋭い眼光。まっすぐで愚直、毎日選手一人ひとりの目線に立って声をかけ、励まし、共に走る。
「僕らは強くなりたい。感動と笑いと夢を世界中に届けたい。
学校の中だけで完結するんじゃなく、地域の人たちに感動を届ける存在でありたい。」

吉瀬監督の言葉には、うきはというまちへの深い愛情がにじむ。
彼にとって、チームは「学校の部活」ではなく、「地域の代表」。
地域の想いを背負って勝ち進むことが、まちを笑顔にすることにつながる――そう信じている。
まちと子どもが育ち合う、うきはのかたち
子どもたちが通学路の畑で、高齢者に声をかけられる。
「大根がいっぱいできたけど、抜ききらんけん抜くの手伝って!」
部員たちは快く大根を抜き、手渡す。
「ありがとうね、これ持って行かんね」と何本かいただく。その人の笑顔と気持ちが、何よりのご褒美になる。
「道の駅やみのうの里さんで籠を置かせてもらっていて、生産者さんから下宿してる生徒に野菜を分けていただいたり、企業さんが看板を出して応援してくれたり。
そういった形で様々な協力をいただいているという実感はすごくあります。ありがたいです。」
(吉瀬監督)
うきは市では、こうした地域の“手のぬくもり”が、日常に溶け込んでいる。
まちが子どもたちを支え、子どもたちがまちを照らす。
この循環が、“うきはらしさ”そのものだ。

ラグビーが教えてくれる「自分を信じる力」
「ラグビーって怖いし痛いスポーツ。だからこそ、自分の弱いところが見えてくる。
でも、嫌な自分も情けない自分も、子どもたちには全部含めて好きになってほしい。
コンプレックスも含めて、“そんな自分でもすごく価値がある、そんな自分だからこそ価値がある”ということを伝えたい。」
(吉瀬監督)
泥だらけのグラウンドで、涙も笑顔もぶつけ合う。
勝敗よりも大切なのは、「どんな自分でも前を向く強さ」。
それを育む環境が、うきはにはある。
自然の中でのびのびと、地域の人に見守られながら、“育つまち”がここにある。


「帰ってこられる場所」をつくるということ
「ラグビーの強豪校ってだいたい関東や関西に多いので、進学したまま地元に戻らない子が多い。
だから、戻ってこられる場所を作りたかった。
社会人チーム“ルリーロ福岡”を立ち上げた一つの目的です。」
(吉瀬監督)

“帰ってこい”という想いから生まれたルリーロ福岡の立ち上げ。
卒業後もうきはに帰り、ラグビーを続けながら後輩を指導したり地域と関わったりできる。
それは「育てて、送り出して、また迎える」――まちぐるみの育成サイクル。
地域が人を育て、人が地域を豊かにする。
この循環が、うきは市の強みであり、未来の希望だ。
キャプテン・山岡洋祐が語る「うきはの空気」
北九州市出身のキャプテン・山岡洋祐さん。
初めてこのまちに来たときの印象は「田舎やな〜」だった。
「うきはに来て一番最初に思ったのは、田舎やな~と。(笑)
でも季節をいちばん感じられる場所だと思う。
地元にはなかった鳥の声とか雨の匂いとか、そういうのが感じられるんです。
この山(耳納連山)を見ているだけで心が落ち着く。」

地域の人が育てた野菜や果物、応援の声。
支援のひとつひとつが、彼らの日常を支えている。
「うきはの山が見えるこの場所が一番好き」と笑う姿に、
このまちで過ごした3年間の温もりがにじむ。
兄弟でラグビーに挑む、うきはの子どもたち
「空気がきれいで、他地域から来た人も地元の人もラグビー部はみんな明るくて面白い。」
「うきはは自然豊かだから、辛いことがあってもリラックスできます。」
兄弟で同じチームに所属する選手もいる。3年生の吉岡 陽さんと1年生の吉岡 紘さんだ。
地元うきは出身の彼らは、このまちで夢を育んでいる。

「花園に行って、日本一になる」――その言葉の裏には、地域の声援と家族の支えがある。
彼らにとって“うきは”は、夢の始まりであり、帰る場所でもある。
チームを支える影の主役たち
マネージャーの西ひかるさんは、まっすぐに言った。
「誰かのためにサポートすることが、自分の18年の人生で一番の正解だったって思います。」
選手たちが輝くために。
練習の準備も、遠征のサポートも、すべて裏方の力があるからこそ成り立つ。彼女も選手と一緒に戦っている。
プロモーション事業部の松田悠奈さんは、カメラで選手を追い続ける。
「毎日撮ってると、少しずつプレーが上手くなっていくのがわかるんです。
全員のプレースタイルが違って、撮るのがすごく楽しい。」
彼女たちの視点が、このチームを地域と結びつけている。
SNSで発信する写真や動画が、地域の人にも外の人にも笑顔を届け、
「うきは、いいまちだね」と言わせる小さな架け橋になっている

うきはで育つ、人生の根っこ
「うきはって人材育成にすごくいい土地なんです。
子どもがのびのび育てられる。価値観を認め合える土壌がある。」
(吉瀬監督)
井戸水の美味しさ、様々な果物の豊富さ、そして人のあたたかさ。
そのすべてが「育つ」という言葉と深く結びついている。
思春期の多感な時期を、自然に囲まれたこの土地で過ごすこと。
それはきっと、心のどこかにずっと残る。
「都会で暮らす前に、うきはで青春を過ごしてほしい」
そう語る監督の言葉には、教育者として、父として、
そして“うきはの人”としての誇りがあった。

そして未来へ。うきはが育てる、あたたかい人間力。
「本当はこれがしたいけど恥ずかしいからできないとか、自信がなくてできない人に、
できるぜ!頑張って!みたいな自己実現ができる町であることが自分の理想です。
そういう意味では、うきははいろんな子を受け入れる土壌があります。
ラグビーだけじゃなく、どんな子でものびのびやれる。
いろんな大人と触れ合って育つから、人間として成長できる。
うきはに来たら、きっと“いい人間”になれると思います。」
(吉瀬監督)
うきは市は、観光地としての魅力だけではない。
ここには、人が育ち、人が帰り、人が関わり続けるまちがある。
スポーツを通じてつながる縁が、いつしか人生の糧になる。
それこそが、「観光×スポーツ」が生み出すうきはの新しい価値だ。

校歌が響くグラウンドに、青春の原風景がある

練習後、毎日 耳納連山に向かって校歌を歌う生徒たちの姿は、まさに青春そのもの。
彼らにとってこの日々は一生の宝物になるだろう。
また、公立ながらしっかりとした理念を持ち、
子どもたち自身がマネジメントや広報を担うこの学校に、
保護者からは「安心して子どもを預けられる」と信頼の声が寄せられている。
― ラグビーが教えてくれる、“生きる力” ―
うきはの空の下で、子どもたちは今日もボールを追い、まちの人々、子どもたちの保護者、
ラグビーを愛する人たちがそれを見守る。
強く、優しく、まっすぐに。
うきはは、そんな人を育てるまちだと感じた。

取材を終えて
取材を通じて感じたのは、浮羽究真館高校ラグビー部が
「理念とそのための柱を理解し行動する」ことを何より大切にしているチームだということ。
吉瀬監督の指導のもと、主将や選手一人ひとりの姿勢、日々の練習の一瞬一瞬に、
その誠実さと情熱が表れていた。
3年生にとっては最後の県大会。
全力で挑むその姿に、地域の人々はきっと心を震わせ、笑顔と感動、そして未来への希望を共有するはず。
うきはのまちは、これからもこの若き挑戦者たちを温かく見守り、応援し続けます!

第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会福岡県予選大会
・準々決勝 11/2(日)浮羽究真館高校-東筑高校
※その後の組み合わせは、福岡県ラグビーフットボール協会のHPにてご確認下さい。
https://www.rugby-fukuoka.jp
浮羽究真館高校ラグビー部Instagram
https://www.instagram.com/ukiha_kyushinkan_rugby
観光×スポーツでつながるまち「うきは市」
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