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インバウンドのリアルな声で紐解く「滞在そのものが観光になる町・うきは」
1|はじめに:なぜ彼女は”5回”来たのか
福岡県うきは市。白壁の町並みが残る吉井町には、都市の喧騒から離れた静けさ、土地の人の温かさ、穏やかな空気が流れている。
九州で観光といえば、博多・天神を拠点にショッピングや温泉地が定番だが、近年は「福岡の女子旅」の新しいスタイルとして、うきは市のような地方都市での「カフェめぐり」や「長期滞在型の旅」が注目されている。
町を歩いていると、ときどき外国の旅行者に出会う。
けれどその中に「長期滞在型の旅」で「通算5回」もうきはを訪れている人がいると聞けば、誰しも驚くだろう。
今回インタビューしたのは、香港在住のカレンさん。
彼女はこれまでに5回うきは市に滞在し、しかも1回の旅で1か月近くこのエリアに滞在することもある。
なぜ、うきはに?
なぜ、こんな”小さな町”に?
なぜ、彼女にとって”ここは特別な場所”なのか。
その答えは、インタビューの中で自然に見えてきた。それは、観光ガイドには載らない、小さな出会いや町の空気、そして「人のあたたかさ」。うきは市が今後さらに大切にしていくべきものが、彼女の言葉の中には詰まっていた。
通訳として、観光会館土蔵(うきは観光みらいづくり公社)・台湾出身のスタッフ ジェシーも同席し、うきは市が海外からどのように映っているのか、インバウンドの視点で深掘りしてみた。
うきは市の「滞在すること自体が観光コンテンツ」「自然に生まれた関係人口」のリアルな実例でもある。


2|カレンさんという旅人――長期滞在を繰り返す香港のグラフィックデザイナー
――今回うきは市に来たのは何回目ですか?
カレン:今回で5回目です。最初に来た時から、よく「なぜうきはを選んだの?」って聞かれます。
香港でデザインの仕事をしているというカレンさん。
まとまった休暇を使って日本に長期滞在する旅人だ。
日本への渡航歴は10回以上。「20回かもしれない」と笑うほど、日本の文化に深い関心を寄せている。 初来日は20年前。東京を拠点にした「買い物中心の旅」から始まり、やがて「地方で静かに過ごす旅」へとスタイルが変化していった。
カレン:東京で買い物する旅も最初は楽しかったけど、人が多すぎて疲れてしまうんです。だから新しい場所、静かな場所を探しているうちに、地方が気になり始めました。
このような”女子旅”のスタイル変化は、カレンさんだけではない。 福岡を起点に九州の観光を楽しむ旅行者の中には、大都市の喧騒を離れ、地方の静けさと文化を求める人が増えている。
3|うきはとの出会い:九州旅行の計画中に見つけた”白壁の町”
――どうやってうきはを知ったんですか?
カレン:2023年に九州を旅行したとき、ネットで”1〜2日で行ける町”って紹介されていて。 その時に見た浮羽稲荷神社の写真に惹かれました。
九州初上陸の旅では、博多に泊まりながら周辺を巡る中でうきはを訪れた。 最初の滞在で「また来たい」と思ったという。
カレン:東京に行くと買い物の袋で手がいっぱいになる。でも、地方は違う。落ち着いていて、何もしない時間が”良い時間”になるんです。
福岡から日帰りでアクセスできる距離感も、うきは市女子旅の魅力のひとつ。 博多駅から車で約1時間、電車とバスでも訪れやすい立地は、九州観光の新しい選択肢として注目されている。

4|”吉井の空気”に惹かれて──白壁の町並みと静けさがくれるもの
カレンさんが繰り返し口にしたのは、「町の静けさ」。
カレン:車はたくさん通るのに、人はほとんど歩いていない。すごく不思議な静けさなの。夜の白壁の町並みは特にきれいで、心が落ち着くんです。
白壁のイメージは”純潔”だとカレンさんは言う。 地元香港は”人の多さ”が日常だが、うきはの「音の少なさ」は特別で”純潔”を感じられるこの町の景色は最高の贅沢なのだ。
リラックスしたい時、カレンさんは何度でもここに来る。
旅で「癒し」を求める人にとって、うきは市の静けさは観光資源となる。 SNS映えするスポットを巡るだけではなく、ただそこに”いる”ことが心地よい――そんな旅のかたちが、ここにはある。
5|レンタサイクルが開いた”町とつながる体験”
吉井町の観光会館「土蔵」のレンタサイクルは、カレンさんの旅に欠かせない。
カレン:私は車の運転ができないから、本当に助かります。どこへでも行けるし、町の風を感じられる。
初めて来た時は予約方法も分からず、「泊まった宿に貼ってあった紙を見て知りました」と笑う。 これが、彼女にとって”うきはが好きになる大きなきっかけ”になった。 彼女のInstagramには自転車とうきはの風景の写真が多く投稿されている。
カフェめぐりをする際も、レンタサイクルがあれば福岡の地方エリアを自由に移動できる。 車を持たない女性旅行者にとって、このサービスは旅の質を大きく変える存在だ。

カレンさんのInstagramはこちら
6|心に残ったエピソード:jingoroでの出来事
もっとも強く印象に残っている出来事を聞くと、カレンさんは迷わずこう答えた。
カレン:最初に来たとき、jingoroに行ったんです。すごく混んでいて、外で1時間待ちました。暑い日で緊張していたけど、お店の人がずっと気にかけてくれて…。予約時間になってケーキとコーヒーを頼んだけど、その時レンタサイクルの返却時間が迫っていて緊張していました…。
不安でいっぱいの中、店のスタッフから思いもよらない言葉が。
「車で送りますよ」
カレン:本当に驚きました。自転車を車に乗せて、一緒に土蔵まで連れて行ってくれたんです。あれが”うきはの優しさの最初の体験”。忘れません。
ジェシー:jingoroさん優しい!
彼女の”うきは愛”を決定づける出来事だったという。
福岡カフェめぐりで人気の「jingoro」は、地元でも行列のできる人気店。
しかし、カレンさんが心を動かされたのは、ケーキの美味しさ以上に「人の温かさ」だった。 観光地としての魅力は、ハード面だけではなく、こうした”ソフト面”にこそ宿る。


7|お気に入りの店、Instagram、そしてコミュニティの広がり
カレンさんは、「うきはのお気に入り店」を片っ端からInstagramでフォローしている。
カレン:日本語は読めないけど、翻訳すればわかるし、写真で”今日お店が開いてるか”が分かる。旅のスケジュールを立てる時にInstagramの情報はすごく助かっています。
ukihaloveのサイトも毎日のように見ているという。
カレン:「ここに載っているお店、ほとんど行ってます(笑)」顔見知りのお店も多いよ。少し英語が話せるお店も結構あるし、英語ができないお店でも、私を見ると「カレン!」と手を振ってくれたり「また来たの?」って声をかけてくれる。まるでお友達のように接してくれたり、帰ってきたみたいな気持ちになります。
小さな店、個人店が多いからこそ生まれる”顔の見える関係”。
これが、インバウンド関係人口の最も自然な形だ。
うきは市の旅を計画する際、Instagramや観光サイトで事前に情報を得られることは、旅行者にとって大きな安心材料。
言語の壁を越えて、視覚的に情報を得られる環境が整っていることが、リピーターを生む土台になっている。

8|カフェ、パン、クラフトビール──世界にない”日常の豊かさ”
カレンさんの旅のテーマは「パンとコーヒー」。
カレン:私はパンとコーヒーが大好き。香港はあまり美味しくないから、日本で楽しむのが幸せ!カフェ巡りが大好きなんです。
さらに、お酒も!
香港にはクラフトビール工場がなく、「日本で地ビールが飲める」ことが特別だという。
福岡カフェめぐりの中でも、うきは市は特に”個性的な個人店”が多いエリア。 大手チェーンではなく、店主のこだわりが詰まった一軒一軒が、旅の思い出を特別なものにする。 クラフトビールや酒蔵巡りは、うきはをはじめとする筑後エリアの強み。
これも”滞在型観光”の価値を高める要素だ。
九州観光の中で「食」を楽しむなら、うきは市は外せない。 地元のフルーツを使ったスイーツ、焼きたてのパン、こだわりのコーヒー──これも”ここでしか味わえない体験”となる。


9|日本の文化への敬意:清潔さ、誠実さ、そして挨拶
カレン:日本の好きなところは細かいところに”真面目さ”が表れているところ。文化としての日本が大好き。
これはジェシーも同感だとか。
ジェシー:やっぱり日本のトイレなんかを見ていても思いますね。トイレが綺麗、小さい空間にデコレーションしてあったり、いい香りだったり、かわいい(笑)トイレひとつ見ても、日本の文化がうかがえます。
カレン:あと道で会った子どもたちが私に”こんにちは”って言ってくれたんです。すごく嬉しかったし、これには感動しました。
観光は”非日常”の体験だ。
しかし、日本の魅力は日常に宿る。
まさに2人の言葉からそれを感じ取ることができた。
福岡での女子旅の魅力は、観光スポットを巡るだけではない。
地域の人々との何気ない交流、清潔で心地よい環境、礼儀正しい文化──そうした”日常の豊かさ”こそが、旅人の心を掴むのだ。
10|祭りから見える”暮らしの文化”
2月には”おひなさまめぐり“。
そして”うきは祭り”、大好きな”お祭り横丁”は夜まで人があふれ、賑やかさに驚いたという。
カレン:こういう地域の伝統行事は本当に好き。毎年参加したい。
地域の祭りは外国人にとって”一度きりの観光”ではなく、「また来たい理由」になるのだ。
九州の観光では、季節ごとのイベントも大きな魅力。
うきは市では春の筑後吉井おひなさまめぐり、秋のうきは祭りなど、地域に根ざしたお祭り行事が旅行者を迎える。こうした体験は、ガイドブックには載らない”暮らしの文化”に触れる貴重な機会だ。

11|インバウンドが教えてくれる、うきは市の強みとは何か?
カレン:例えば博多にしても他の観光地にしても、すごく観光客に向けたものが揃っているけど、うきははカフェ、パン屋さん、ご飯屋さん…とそれぞれのお店が独立していながらも町に全部あるから、町を巡ることができるし楽しい。
田舎だからこその小さなお店たち、だけどいろんなカラーがこの町にはある。 長期滞在しながらゆっくりそこを楽しめることは、うきは市の魅力だ。
カレンさんとの対話から見えてきた”うきはの魅力”を改めて考えてみる。
⑴静けさという価値 騒音のない時間が、旅人にとって”贅沢”になる。
⑵レンタサイクルが開く自由度 車がなくても町をゆっくり楽しむことができる。
⑶小さなお店の自然なホスピタリティ 巡る先での「また来たの?」「おかえり」このひと言が、何よりの観光資源。
⑷日本文化の誠実さ 清潔さ、丁寧さ、礼儀。外国人にとって”心が落ち着く国”である理由。
⑸SNSやWEBによる情報の見やすさ Instagramで店の状況が分かること、地域の情報をまとめた観光サイトは言語の壁を越える大きなインフラ。
福岡での女子旅、うきは市での女子旅を考えるとき、こうした”小さな強み”が積み重なって、唯一無二の体験を生み出している。
12|最後に:関係人口は”つくる”のではなく”育つ”
カレンさんは、特別な呼びかけをしたわけでも、観光キャンペーンを行ったわけでもないのに、自然とこの町に”何度も帰ってきてくれる旅人”だった。
それは──
うきは市の暮らしそのもの、
町の人の自然な振る舞い、
静けさ、
そして訪れる度に「おかえり」と迎えてくれる温度が、
旅人の心を温めるからだ。
関係人口は”つくる”のではなく、”育つ”。
そのことを、彼女の旅は教えてくれている。
インタビューの終わりに「また冬に来ますね!」と笑顔を見せてくれた。
その時は私たちも「おかえり」と声をかけることだろう。 九州を訪れる時、福岡を旅する時、うきはを巡る時──たどり着いて欲しいのは、この”温かさ”だ。

Special thanks 通訳:ジェシー
取材:ukihalove.jpスタッフ(11月下旬)




インバウンドのリアルな声で紐解く「滞在そのものが観光になる町・うきは」
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