白壁通り
-
蛭子町珈琲店
白壁通りのその先から、何やら香ばしいいい香り。白い暖簾が掲げられたそこは、挽きたて珈琲をネルドリップの一杯立てで提供してくれる「蛭子町珈琲店」だ。
往時をしのばせる、築140年の佇まいが白壁の町並みにしっくりと馴染んでいる。引戸を引いて店内へ足を踏み入れると、一変してジャズが流れる小粋な空間。3席のカウンターとテーブルが配され、店奥にはクラシカルでレトロな雰囲気の一室も用意されている。
シャラシャラシャラ〜♪
コーヒーミルに豆が滑り込んでいく音が響き渡り、続けてゴリゴリゴリ…。
店内はたちまち珈琲の香りで包み込まれていく。
一滴一滴ネルに優しく湯を落としていくマスター・岩元亮五さん。
ネルドリップした珈琲の柔らかでなめらかな飲み心地が好きだという。フィルターで味に違いが生まれるとは、奥深き珈琲の世界。
厳選した生豆を仕入れ、個性が引き出せるよう店内に据えられている焙煎機で焙煎している。
単一銘柄のほか、苦味や酸味、甘味、深みなど個々の特徴を持ち合わせた「下町ブレンド」「町ブレンド」「横丁ブレンド」も人気。好みを伝えればおすすめをいくつか提案してくれるのも嬉しい。
じつは店名「蛭子町珈琲店」は、岩元さんのお父様が名付けてくれたという。店のある場所は「蛭子町」という小字名がついているそうで、町に馴染むよう、そして町の人々に馴染んでいただけるようにとの想いが、その名に込められている。今では観光で訪れる方をはじめ、近隣の皆さんもふらりと立ち寄る憩いの珈琲店として親しまれる存在に。
「かしこまらないで気軽に来てもらえれば。うちは野良着でも大丈夫な珈琲店ですから(笑)」
付かず離れず、程よく寄り添ってくれる岩元さんの人柄に惹かれる人が多いのもうなずける。居合わせた初対面のお客さんとも自然に会話が始まることもしばしば。
うきはという町の温かさや人の温もりで、一杯の珈琲の味がより一層美味しく感じるのは気のせいではない。
- 営業時間
- 10:00~18:00
- 定休日
- 月曜・火曜
-
ぱんのもっか
パンに魅せられたお客さんが入れ替わり立ち替わり訪れる、ここは幸せのパン時間が流れる「ぱんのもっか」。
開店から閉店まで客足が途絶えることがない、うきはで指折りの人気店だ。
パンを焼くいい香りが広がる店内には食パン、ライ麦、ハード、菓子パン、惣菜パン、うきはの季節のフルーツを使ったデニッシュなどが賑やかに並んでいる。
店奥に目を向けると、店主・吉岡亮次さんをはじめ、数名のスタッフがせっせとパンを作っている姿が見え、そのライブ感も楽しい♪
「ぱんのもっか」では、小さなお子様からご年配の方まで安心して召し上がってほしいと、添加物を極力使用せず、必要ないものは施さないそう。
北海道や福岡、佐賀の国産小麦粉を使用するほか、うきは「ゆむたファーム」の卵、さらには野菜やフルーツもできるだけ地場のものを使用しているという。
小麦粉とシンプルな食材で、さまざまな形、味が生み出されるパンの世界。
どれも噛みしめるごとに小麦の香りが膨らみ、その美味しさに引き込まれていくよう。
この味にたどり着くまでの吉岡さんのパン人生とは。
若かりし頃、某大手食品会社の飲食部門に配属され、そこで初めてパン作りを学び、魅力に開眼。
その後、さらに学びを深めるため、地元高知県のパン屋で約10年経験を積む。
そんな中、心が突き動かされた出来事が。
閉店後に大量に売れ残ったパンを廃棄する際、高校生のアルバイトが「こんなことをするためにここに来たんじゃない。私にはできません」と涙を流したそう。確かにそうだな……、と思いつつも、会社という組織の一員だった吉岡さんは、どうすることもできず、そのもどかしさが“独立”という新たなスタートを踏み出させたというわけだ。
その後、福岡県うきは市で独立した店のスタイルは“無くなり次第終了”。吉岡さんらしい、まやかしのない誠実なパン作りだ。
その味はお客さんが列をなして並んでいる姿が物語っている。
「何年経っても変わらない素朴なパンを長〜く作っていきたいですね。そしてパンを通じて、うきはで思い出に残る心地よい接客や空間もご提供できれば」と。
お店の入り口、白壁通り沿いに掲げてある「パン焼けてます」の小さな看板が開店の目印。
ワクワクしながらあれこれ迷うのも楽しいひと時。
トレーとトングを持ち、あなたならどのパンをチョイスしますか?
- 営業時間
- 9:00~18:00(パンがなくなり次第終了)
- 定休日
- 月曜・木曜
-
林肥料店
昔の風情を色濃く残し、懐かしい感覚を呼び戻してくれるかのような店構え。1868(明治元)年の創業当時を彷彿とさせるホーロー看板が「林肥料店」の歴史を物語っています。
店内の設えは初代の時代から変わらぬまま。大きな古時計が時を刻み続ける姿が印象的。
現在は、米や麦、果樹、野菜、花などの肥料や土づくりのための土壌改良剤を扱い、また創業以来、日本で初めて人造肥料を作った多木肥料(現在:多木化学株式会社)の特約店として、農業を下支えする存在に。
特筆すべきは、4代目・林訓生(はやしくにき)さんの農業・肥料に込める想い。
「知識があっても経験がなければ、最適な肥料は提案できない」と、自ら田を耕し、肥料の量やタイミングを実証しながら米作りを行っているという。経験から裏打ちされた提案には揺るぎがなく、今では多くの農家さんが信頼を寄せています。
米作りの経験とたゆまぬ探究心から誕生した米「はやし米(はやしらいす)」。一度聞いたら忘れられないユニークなネーミング!
ミネラル分を多く含む伏流水と、筑後川によって形成された豊饒な大地で育つ「はやし米」は、田植え後に除草剤や農薬を一切使わない。そのため、せっせと人力で草取りをしているそう。
安全性を重視した生産管理を行い、愛情をたっぷり注いで育てた安心米は、米に負担がかからない方法で精米しているとあって、白度が高いのが特徴。
艶やかな見た目に粒立ちの良さ、そしてふっくらもっちり♡甘みの余韻に心が満たされる美味しさです。
うきは市吉井町の千年エリアで育てているオリジナルブランド米「千年米(ちとせまい)」もありますよ。
なんとお店には昭和38年に製造された「ダイハツ」オート三輪が格納されています。今だ現役で公道を走る姿は道行く人の注目の的。
「両親がこの車で肥料を配達しながら、懸命に自分たちきょうだいを育ててくれたので、どうしても手放せないんだ。今ではこのオート三輪はいい相棒さ」
林さんが育てる安心・安全な米は店内で購入可能。美味しい作物を食べることができる幸せ。そこには育てる人の想いがあってこそ。
さあ、じっくりと噛み締めながら、うきはの米を味わってみてはいかがですか。- 営業時間
- 7:30〜19:00 ※おひなさまめぐり期間中はこの限りではありません
- 定休日
- 不定休
-
御菓子処 菊家
「珍敷塚(めずらしづか)」「耳納連山」「白壁通り」など、うきはを彷彿とさせる名前のお菓子をはじめ、季節限定の「さくら餅」や日本の春夏秋冬を繊細に表現した干菓子などで親しまれている「菊家」。
中でも「珍敷塚」は、うきは市吉井町にある国指定史跡・珍敷塚古墳から名付けられており、全国菓子大博覧会で「名誉金賞」を受賞した逸品。
取り寄せた小豆を丁寧に炊いてこしらえた自家製餡のやさしい甘みと落雁の風味が調和し、素朴ながら高貴な味わいを醸し出しています。
上に添えられているのはシソ。この香り高いしそが余韻を残して静かに消えていく奥ゆかしさも滋味深き味。
美味しさにこだわり、全国各地の材料を吟味して一つひとつ“真心”を込めて作られている和菓子からは、店主・五島恭治さんの人柄と信念が見てとれます。
「手間ひまかけるのが和菓子の仕事。長年作り続けているけれど職人にゴールはない。常にいい菓子を追求しないとね」
店内には「菊家」の和菓子を食べた小学生から送られた、感謝の気持ちが書かれた手紙が大切に掲げられている。
それを見ながら「嬉しいね〜」と目を細める五島さん。
和の心が随所に込められている「菊家」の和菓子。
うきはのお土産や贈り物に是非どうぞ。- 営業時間
- 8:00〜18:00
- 定休日
- 木曜
-
梅廼家醸造場
「梅廼家醸造場」は明治26年に創業し、うきはの人々の食を下支えしてきた歴史ある醤油屋。
「よしい醤油うめのや」と描かれた店頭の大きな木樽がお出迎え。白壁通りに佇む築150有余年の建物が、老舗の貫禄を醸し出しています。
醸造所の扉を開けた瞬間、鼻腔を駆け抜ける芳醇な香り。その熟成香に懐かしさを感じ、思わず和食が恋しくなる。
「うめのや」では独自の“寝かせ”製法により、1〜2ヵ月間熟成させてから醤油を詰めるそう。1本ずつ手作業で瓶詰め、ボトル詰めを行い、ラベルも1枚1枚丁寧に手貼り。
醤油づくりの源は「水」。
耳納連山と筑後川によって育まれる“恵水”によって、現在用途に応じた全6種類の醤油を醸造しています。
中でも、看板人気商品は濃厚万能醤油「寿(ことぶき)」。
“きあげ”という大豆を絞ったものに塩水を加えず、もろみの塩分だけで醸造するため、とがりのない味が特徴。
本来大豆が持っている旨みをダイレクトに感じ、雑味もない。熟成によって丸みのある柔らかな味に変化するとは、じつに奥深き醤油の世界。
まずは豆腐に垂らしたり、卵かけご飯でどうぞ♪
現在6代目となる社長・正木佳奈子さんは、先代が亡き後、代々作り伝えてきた醤油を絶やすまいと、受け継ぐ決意を固めたそう。長い年月をかけて、お客様と築き上げてきた信頼と期待を裏切るわけにはいかない。続けなければという使命感だけでここまで頑張ってきたという。
今では先代の醤油づくりの信念を継承し、息子さんと共に醤油づくりに励んでいます。
お店には給食用の醤油を納品している小学校から届いた「ありがとう」の色紙が。
長い歴史で培われた自慢の味は、脈々と「まごころ」と「感謝」で受け継がれています。
親子で紡ぎはじめた老舗の醤油醸造所「うめのや」。
130年経っても変わらない美味しさを全国へ発信し続けています。
(注文は電話・FAXの他「道の駅うきは」「耳納の里」でも購入可能)- 営業時間
- 9:00~17:00
- 定休日
- 不定休
-
青花 ステンドグラス 立丁尾花
築150有余年の時を重ねた古民家の扉を開くと、照明が絞られたギャラリーにやさしく灯るステンドグラスのランプ。
ここはうきは市出身のステンドグラス作家・尾花光昭さんの工房「立丁尾花(たてちょうおばな)」だ。
「暮らしの中に気軽に取り入れてほしい」と、1階ギャラリーにはステンドグラスをはじめ、ランプやタイル、箸置き、アクセサリーなどが展示されている。
幻想的な作品や思わずクスッと笑みがこぼれる遊び心があるものまで、時間を忘れ見惚れてしまうほど。
季節に応じてギャラリーが模様替えするため、訪れるたびに新たな出会いがある。
欧州へと渡り、絵付技術を学んだ尾花さんは、ステンドグラスを制作して40年以上だそう。帰国後は日本の暮らしに溶け込み、四季の移ろいを感じられる作品づくりに邁進する日々。描いては焼き、描いては焼きを何度も繰り返すことで味わい深い色合いが生まれるという。
独特な感性を宿らせ、一筆ごとに描かれる繊細な絵柄は、ランプの柔らかな光によって美しくその姿を浮かび上がらせる。
欧州で学んだ伝統的な技法を元に、和や李朝の手法を取り入れたオリジナルのステンドグラス“青花ステンドグラス”の制作も手がけている。特筆すべきは、陶器の“青”と一体化して見えるよう絵付をするという独自の技術だ。
あえて吹き墨をして古さを出し、和紙の風合いを醸し出すそうで、見れば見るほどその繊細さに心酔。
日々の暮らしに彩りを添える作品との出会い。
ノスタルジックな灯りに誘われて、今日もひとり、またひとりとギャラリーの扉を開く。
- 営業時間
- 10:00〜17:00 (昼休み 12:00〜13:00)※季節によって変動
- 定休日
- 火曜
-
ギャラリー 光画堂
前衛美術集団「九州派」で活躍し、福岡県展などで受賞を重ねた、うきは市吉井町出身・尾花成春(おばなしげはる)の作品が常設されている「ギャラリー光画堂」。
「父親が生涯に渡って描き続けた作品をこのまま眠らせておくのはしのびない。自分の役目は『尾花成春』を皆さんに再評価していただき、後世に作品を残していく取り組みをしていくこと」
そう話すのは、オーナー・尾花基さん。ギャラリーには、父である『尾花成春』が70年以上にわたって描き溜めた、多くの作品が展示されています。
地元うきは市では、あまねく知れ渡っている尾花成春さん(1926年〜2016年)。
当時父親から買ってもらった油絵具が嬉しくて、絵画の魅力に惹き込まれたそう。16歳で初めて描いた絵は現存し、大切に保管されています。
亡くなる2016年まで絵を描き続けた彼の作品は、じつにアーティスティック。
ギャラリーに訪れた人々が決まって口にする「これらは本当に1人の作家さんが描かれたんですか!」
その言葉通り『尾花成春』の独創的な作品にただただ感嘆の声がもれる。
年代ごとにモチーフやタッチも変わリ、バリエーションの豊富さは観る人を瞬く間に魅了します。人によって捉え方が違うため、あれやこれやと想像するのも楽しいひととき。
ギャラリーでは、作品を観ながらをコーヒーなども飲めるようになっているため、寛ぎながらアートな時間を過ごすことができますよ。
通常は常設展として開放されていますが、予約をすれば「貸しギャラリー」として絵画や写真の個展、グループ展など幅広くご利用可能。
「アート好きが訪れる町になってほしい」と基さん。
「アートの町、うきは」
多くの人の心を惹きつける魅力がここにはあります。
さあ、心が揺さぶられる『尾花成春』の作品を鑑賞しに、次の休日はうきはを訪れてみま- 営業時間
- 11:00~18:00
- 定休日
- 火曜日、水曜日(不定休あり)
-
工房 雛子
雛人形といえば、通常はセット販売。
「工房 雛子(ひなね)」では、雛人形や雛道具を単品で取り揃えて、バラ売りをしてくれる全国でも数少ないお店。
特筆すべきは店内の品揃えの豊富さ。
製作された時代によって大きさや特徴が異なるため、小物一つとっても千差万別。人形店を営んでいた経験とネットワークを活用し、普段お目にかかることができない希少な雛道具・単品パーツの取り寄せが実現したという。
例えば、お内裏様とお雛様の頭(かしら)。
久しぶりに飾ろうと思ったらお顔がシミだらけ……、なんて場合は、頭だけ購入できるんですって。顔の表情やサイズも豊富なため、お店に直接人形を持参すればスムーズに付け替えが可能。
随分前に購入した“これ”が壊れました……、無くなりました……という方もご安心を。
扇子や刀、笛、鼓、ひし餅、とっくりなど、こんな細かなものまで単品で買えるの!?という物まで揃っています。
お店に無いパーツも、せっかくのご縁だからと、時間をかけて探してくれる心遣いも嬉しいですね。
台や屏風、ぼんぼりもバラ売りしてくれ、その他、雛道具はお好みやご予算に合わせてカスタマイズOK。最近は、7段飾りのお雛様をコンパクトな平飾りへ変更したいという方が増え、新たなスタイル・飾り方として注目されています。
店内には店長・梅野美砂子さんがセレクトした可愛い和雑貨もいっぱい。
夏になれば約300種類以上の花火が店頭に並び、こちらも一本ずつバラ売りOK。
店頭にはお雛様に成りきって記念撮影ができる大きなパネルもあり、今や白壁通りの定番スポットに。
店内のディスプレイは【1〜4月:お雛様】【5月:端午の節句】【10月:ねこ展】【11月〜年内:正月商品・初節句の羽子板や破魔弓・干支商品】と、季節に合わせて展示内容が入れ替わります。
さて、あなたのお雛様は全部揃っていますか?
遠方で足を運べない方でも対応してくださるので、お気軽にご相談を。ねこちゃん大好き♡美砂子さん- 営業時間
- 11:00~17:00
- 定休日
- 木曜
-
ふくずし
うきはの「ふくずし」は、肩肘を張らずに来店できる気軽さがいい。敷居が高いと思われている寿司屋の概念を、ガラリと変えてくれる良心的な価格も魅力の一つ。
写真は、にぎりやちらし寿司、茶碗蒸し、すまし汁、野菜サラダがセットになったランチ限定「しらかべ定食」。代々魚屋を営んでいたという、魚を知り尽くす大将が仕入れる新鮮なネタがシャリの上で華やいでいる♪
つけ場に立ち、柔らかな手のひらで小気味良く握られたシャリは、周りがしっかりとして中身はフワッ。粒立ちが良く、口の中に入れるとほろりと崩れる。甘めに仕上げた、いい塩梅のすし酢と、しっとりしたネタがしみじみ美味い。
鰹節や北海道羅臼産昆布から丁寧にひいた出汁を使った茶碗蒸し、さらに鯛の旨みがたっぷりと滲み出た上品なすまし汁も安定の美味さだ。この他、巻き寿司、箱寿司、刺身、一品料理に至るまで味わえる。
15歳から寿司一筋51年という、大将・江副吉法さん。
「シャリ炊き3年、合わせ5年、握り一生」と言われているように、寿司職人の道は険しい。「同じ寿司屋での修業では頭打ちになる」と、博多・岡山・大阪・北九州で研鑽を積んだと聞き「ふくずし」の旨さの理由が腑に落ちた。
「寿司を通して沢山の人たちと縁が繋がる。これは回転寿司では決して味わえない」と大将。
「うちはうきはで2番目に美味しい寿司屋」と自ら称するその心を聞くと「やっぱり家庭の味が一番だから、うちは2番目さっ」
八女・玉露の粉茶でホッ。
最後のお茶まで奥ゆかしく、至福のひととき。回転寿司もいいけれど、大将が心を込めて握る寿司はまた格別の味。- 営業時間
- 11:00~22:00
- 定休日
- 不定休